Wiseで海外送金するとき、descriptionフィールドに TOKI-XXXX-XXXX-XXXX TimelessAdvisor-SpotConsultation と入力していた。トランザクションの固有識別子と、サービスの正式名称を一行に詰め込んだ形だ。
ある日、その文字列が長すぎて受け付けない可能性に気づいた。Wiseのdescriptionフィールドには文字数制限がある。「TimelessAdvisor-SpotConsultation」を縮めなければならない。
名前を縮めることは、サービスの本質を問い直すことだった。何を残し、何を削るか。その判断は、サービスが何であるかという定義そのものだ。
コード一覧
整理の結果、すべてのプロダクトサービスに2〜4文字のコードを割り当てた。
| Code | Full Name | 意味 |
|---|---|---|
| MQxN | Multi-QR (N-pack) | QR生成クレジット |
| TKxN | Tokushu (N-pack) | NDL特集権 |
| TA-SPOT | Timeless Advisor Spot | スポット相談 |
| TA-RETN | Timeless Advisor Retainer | 顧問契約 |
| WA | Workaway | 国際人材導入支援 |
| OG | Off-Grid | インフラ自立化支援 |
| AMB | Ambassador | Pearl Soapアンバサダー |
| SC | SoulCarrier | 共鳴の会(任意金額) |
TOKI-XXXX-XXXX-XXXX がトランザクションの固有識別子。プロダクトコードが「何を」、TOKIコードが「誰の」を示す。送金のdescriptionに TOKI-SPOT-2603-0001 TA-SPOT と書けば、それだけでトランザクションの全貌が分かる。
なぜこの8つなのか
TokiQR(MQ / TK)——存在証明を民主化するプロダクト。すべての起点。QR1枚に最大30秒の音声を刻む独自音声符号化技術がコアであり、NDL特集権は国立国会図書館との接点を作る。収益の柱であり、他のすべてのサービスを支える基盤。
Timeless Advisor(TA)——問いの質が設計の質を決める。経営者の思考の壁打ち相手として、スポット相談と顧問契約の二種を用意した。プロダクトを「作る」だけでなく、「なぜ作るのか」を問い続ける場所。
Workaway(WA)——国際ボランティアの仕組みで地域を開く。人を動かすインフラ。海外からの視点が入ることで、地域が自らの価値を再発見する。
Off-Grid(OG)——電力・通信の自立。場所を選ばない活動基盤。ネットワークに依存しない設計思想は、TokiQRのオフライン再生と同じ思想の延長線上にある。
Ambassador(AMB)——Pearl Soapを通じて地域に根を張る。モノを介したコミュニティの構築。石鹸という日用品が、デジタルでは届かない層への接点になる。
SoulCarrier(SC)——故郷と人を繋ぐ。すべてのサービスが最終的に支えるもの。共鳴の会として、固定金額ではなく任意金額で参加できる仕組みにした。
コードが語る設計思想
2文字で表現できないサービスは存在しない——という仮説を立てた。コードの短さは、サービスの焦点の鋭さと等しい。名前を2文字に圧縮できないなら、そのサービスはまだ焦点が定まっていない。
SoulCarrierが最後に1タイプに統合された経緯がそれを象徴する。当初は正会員・終身会員・賛助会員という3区分を設けていた。しかし、「共鳴」に会員種別を設けること自体が矛盾していた。正会員と賛助会員の違いは何か。共鳴に序列があるのか。
区分を撤廃し、任意金額の一本にした。「サービスの対価」から「活動への共鳴」に変わった瞬間、コードも SC の1つに収束した。名前が縮まったのではない。思想が研ぎ澄まされた結果、コードが短くなったのだ。
コードの短さは、サービスの焦点の鋭さと等しい。
レイヤー構造
↑ 支える
[WA / OG / AMB — 活動基盤]
↑ 支える
[TA — 設計の壁打ち]
↑ 支える
[TokiQR (MQ/TK) — プロダクト基盤]
下から上に向かって、具体から抽象へ。
TokiQR(MQ / TK)がプロダクト基盤として収益を生み、Timeless Advisor(TA)が設計の質を担保し、Workaway・Off-Grid・Ambassador(WA / OG / AMB)が社会との接点を作り、SoulCarrier(SC)が使命を体現する。
プロダクトで稼ぎ、サービスで社会に還元し、SoulCarrierで使命を果たす。この三層構造が、8つのコードの背骨だ。
Wiseという制約が教えてくれたこと
技術的制約が本質的な整理を促した。「TimelessAdvisor-SpotConsultation」が「TA-SPOT」になるまでの過程で、削ぎ落とした先に残るものが本質だと気づいた。
GAS(Google Apps Script)、Cloudflare Worker、credits.html、localStorage——トキストレージのシステムは複数のレイヤーで構成されている。そのすべてのレイヤーを貫く共通言語がプロダクトコードだ。バックエンドの決済処理も、フロントエンドのクレジット表示も、送金のdescriptionも、同じコードで語れる。
表も裏も同じ言語で語れる状態が、システムの健全さだ。内部用コードと顧客向け名称が乖離している組織は、いずれその乖離に足を取られる。トキストレージでは、顧客に見えるコードとシステム内部のコードが同一だ。隠す必要がないから、隠さない。
表も裏も同じ言語で語れる状態が、システムの健全さだ。
2,500万円の覚悟
2025年、マウイ島に4ヶ月滞在した。日本での研究開発費を含め、年間2,500万円を超える投資。すべて私財と借入で賄っている。
なぜそこまでするのか。8つのプロダクトコードの背後には、それぞれのサービスが生まれた必然がある。TokiQRは「普通の人の声を1000年残す」という衝動から、Timeless Advisorは「自分が受けたかった壁打ちを提供する」という欲求から、SoulCarrierは「故郷と人を繋ぐ活動に共鳴する仕組みが必要だ」という確信から生まれた。
戦後80年。官約移民から数えれば140年。ハワイには18万人の日系人がいるが、多くの家族が戦争で日本との絆を失い、遺骨を届けられないまま世代が途絶えようとしている。1世・2世の平均年齢は85歳を超え、日本側の受入親族も高齢化が進む。再び繋がりたいという魂の叫びを、一つでも多く、一人でも多く叶えてあげたい。それを実行に移せる最後のチャンスが、今からのこの10年だ。
負債が重なり、返済の目処が立たない瀬戸際で、このエッセイを書いている。そしてプロダクトサービスのすべてを作り終えた状態に、今ある。文字通りプロダクトコードを削るように、私の全てを削り切った。でも、やり切った。あとは、この8つのサービスを動かし、世に価値を届け、使命の実行に邁進するのみだ。
これから、多くの窮地に追い詰められた人や、災害や紛争、人生の岐路を迎える人たちとも出会っていくだろう。この一連のプロダクトコードは、窮地の中で作り始め、窮地の中で作りきり、届けられる状態に至った。後続の人のために、道は必ず切り開けることを背中で示すことができることを願って。家族が、地域が、国家が、社会が愛と平和で満たされ続けることを願って。
8つのコードに、私たちのすべてが入っている。