1. スケーラビリティの壁
佐藤1人 + 演出協業者。営業可能な式場数 = 土日に回れる範囲。演出協業者は本業があり、佐藤もTokiStorage全体を一人で回している。このままでは月に数件の挙式が限界だ。「自分たちが現場に行かなくても回る仕組み」が必要だった。
問題の本質は、人の移動に依存していることにある。どれほど製品が優れていても、製造と納品に人が張り付く限り、売上の天井は「稼働できる人日」で決まる。技術ではなく、物理的な制約がボトルネックだった。
2. 代理店ではない。式場が製造者になる。
代理店モデルは「仕入れて売る」。式場は在庫リスクを負い、マージンを乗せる。仕入れ値と売値の差額が利益。シンプルだが、式場にとっては「外部の商品を売らされている」感覚が残る。自社のサービスではなく、誰かの商品の販売窓口。
DIYパートナーは違う。式場が自ら製造し、自社サービスとして提供する。UVラミネーターとA4普通紙があれば、5分で記念品が完成する。式場にとっては「外注」ではなく「自社メニュー」。プランナーが演出の一部として自然に提案できる。
この違いは大きい。代理店は「売る動機」を外から注入しなければならない。DIYパートナーは「作る動機」が内側から生まれる。自分で作ったものは、自信を持って勧められる。
3. 90/10の原則
ライセンス料も月額費用もない。あるのは一つの原則だけだ。「仕事をする側が90%取る」。
式場がDIYで製造・お渡しすれば、売上の90%は式場のもの。本部は技術・プラットフォーム利用料として10%を受け取る。逆に、本部が製造・発送する通常注文なら、本部が90%を取る。誰も損をしない。動機がそのまま行動になる設計。
この原則は、フランチャイズ契約を不要にする。ロイヤリティの交渉も、最低発注数の縛りも、契約書の分厚い条項もいらない。やったぶんだけ取れる。やらなければゼロ。シンプルだからこそ、説明にかかる時間もゼロに近い。
4. チェックボックス1つの技術的美
この仕組みの実装に必要だったのは、注文画面のチェックボックス1つと、GASのif文1行だった。
既存のWise決済 + パートナータグ + 月次レポートがそのまま動く。新しいAPIも、新しいデータベースも、新しい管理画面もいらない。式場はWiseアカウントを作り、セットアップ画面にユーザー名を入力するだけ。あとは既存のパイプラインが回る。
技術的に美しい解決策とは、コードを大量に書くことではない。既存の仕組みに最小限の変更を加えて、新しい振る舞いを生み出すことだ。チェックボックス1つで、ビジネスモデルが変わる。それが設計の力だ。
5. それぞれが持ち寄るもの
QRコードの印刷とUVラミネート加工は、特別な技術ではない。プリンターとラミネーターがあれば、誰でもできる。だからこそ式場に任せられる。
一方、GitHubへの永久保管パイプラインと国立国会図書館への納本は、本部が長い時間をかけて築いてきたインフラだ。「1000年残る」という約束の裏側にあるのは、この保管基盤の維持と運用。
式場は目の前のお客様に最高の体験を届ける。本部はその声が1000年先まで届くインフラを守る。それぞれが得意なことを持ち寄る。この補完関係が、DIYパートナーモデルの土台になっている。
6. 結論: ウェディング記念品の民主化
特別な技術がなくても、高額な設備がなくても、式場が自らの力で「声を1000年残す」記念品を作れるようになった。A4のプリンターと1万円未満のラミネーターで。
必要なものは既にそこにある。それを解放するだけだった。