著作権とJASRAC

—— 自分で歌っても、楽曲の著作権は作詞作曲者のもの。音声QRコードと著作権の関係を整理する。

1. 歌えバンバンを歌ってみた

TokiQRの音声QRコードは、最大約30秒の声を1枚のQRコードに収める。自分の声でメッセージを残すことを想定した設計だ。ある日、試しに「歌えバンバン」を自分で歌って録音し、QRコードにしてみた。

できあがったQRコードを見て、ふと思った。これ、配布して良いのだろうか。自分の声で歌っている。録音も自分でやった。でもこの曲は、自分が作ったものではない。

2. 著作権の二層構造

音楽には二つの権利がある。一つは「演奏・歌唱の権利」。歌った人、演奏した人に帰属する。もう一つは「楽曲の著作権」。メロディと歌詞を作った人に帰属する。

自分で歌えば、その録音の権利は自分のものだ。しかし、メロディと歌詞の著作権は作詞作曲者のもの。自分で歌ったかどうかは、楽曲の著作権には何の影響も与えない。

歌った人の権利と、曲を作った人の権利は別物。
自分で歌っても、楽曲の著作権は動かない。

3. JASRACという仕組み

JASRAC(一般社団法人日本音楽著作権協会)は、作詞者・作曲者に代わって楽曲の利用許諾を管理する団体だ。日本で流通する楽曲の大部分がJASRACの管理下にある。

利用者が個々の作詞作曲者に直接許諾を求める必要はない。JASRACに申請し、所定の使用料を支払えば、合法的に楽曲を利用できる。この集中管理の仕組みが、音楽の流通を支えている。

逆に言えば、JASRACの管理楽曲を許諾なく配布すれば、著作権侵害になる。個人の善意や非営利目的であっても、この原則は変わらない。

4. 歌えバンバンの著作権

「歌えバンバン」は1975年にNHK「みんなのうた」で放送された楽曲だ。作詞は阪田寛夫(2005年没)、作曲は山本直純(2002年没)。

日本の著作権法では、著作権は著作者の死後70年間存続する(2018年12月のTPP11発効で50年から延長)。つまり、作曲の著作権は2072年まで、作詞の著作権は2075年まで有効だ。私たちが生きている間に著作権が切れることはない。

なお、2018年の延長前にすでにパブリックドメインとなっていた楽曲は、延長の対象外だ。1967年以前に没した著作者の作品は、旧法の50年ルールで著作権が満了しており、そのまま自由に利用できる。

5. QRコードでも変わらない

音声QRコードは紙に印刷される。一見するとデジタル配信とは異なる媒体に思える。しかし、QRコードの中身はURLであり、そのURLにアクセスすると音声が再生される。法的には、インターネットを通じた音声配信と同じ扱いだ。

媒体が紙であっても、CDであっても、ストリーミングであっても、著作権のある楽曲を複製・配布するには許諾が必要。これは技術の新旧に関係なく適用される原則だ。

6. TokiQRで安心して使えるもの

では、TokiQRの音声QRコードで安心して配布できるものは何か。

シチュエーション別・著作権切れの楽曲ガイド

以下は、作詞者・作曲者ともに著作権が満了しており、自由に歌って配布できる楽曲を用途別に整理したものだ。

結婚式・ウェディング:

子どもの記念・誕生日:

追悼・メモリアル:

卒業・門出:

季節の行事:

ただし、原曲がパブリックドメインであっても、特定の編曲者によるアレンジには新たな著作権が生じる場合がある。自分で歌うか、原曲のメロディをそのまま使う分には問題ない。

TokiQRが本来想定しているのは「自分の声を残す」ことだ。結婚式での誓いの言葉、親から子への手紙、旅先での感想。これらはすべて、著作権の問題が生じない。最も尊い使い方が、最も安全な使い方でもある。

7. 技術が新しくても、権利は変わらない

QRコードに音声を格納するという技術は新しい。しかし、著作権という権利のフレームワークは変わらない。新しい技術が登場するたびに、既存の権利体系との整合性を確認する必要がある。

歌えバンバンを歌ってQRコードにしたあの日、私は著作権の二層構造を体感した。自分の声であっても、曲は誰かのものだ。その理解が、サービス提供者としての責任の一つだと考えている。

技術が新しくても、権利のフレームワークは変わらない。
理解した上で使うことが、作り手への敬意であり、使い手の安心になる。